お中元を渡す時の言葉【完全ガイド】元百貨店員が相手・状況別に例文解説
お中元を渡す時、「何と言って渡せば失礼にならないだろう…」「この一言で、かえって相手に気を遣わせてしまわないだろうか…」そんな不安で、言葉に詰まってしまった経験はありませんか?
こんにちは。百貨店のギフトサロンで15年間、数えきれないほどのお中元選びと、それにまつわるマナーのご相談に乗ってきた私が、あなたのそのお悩みを解決します。
お中元で大切なのは、品物そのものよりも「感謝と思いやりの気持ち」です。そして、その気持ちを正しく伝えるのが「言葉」と「作法」の役割。この記事では、どんな相手・どんな状況でも失礼なく、かつ心が伝わる「正解の言葉」を、具体的な会話例と共に徹底的に解説します。もう、お中元を渡す瞬間に悩むことはありません。
【まず押さえるべき基本】お中元の言葉と3つの心得
具体的な状況に入る前に、すべての場面で共通する基本マナーと心得を確認しましょう。これさえ知っておけば、大きな失敗は防げます。
心得①:魔法の言葉「心ばかりの品ですが」を使いこなす
お中元を渡す際の基本フレーズは「心ばかりの品ですが、どうぞお納めください」です。これは「高価な品ではありませんが、私の気持ちです」という意味を持つ、非常に奥ゆかしく美しい日本語です。この一言で、相手に過度な気を遣わせることなく、感謝の気持ちを伝えることができます。
⚠️避けるべき言葉「つまらないものですが」
昔は謙遜の表現として使われましたが、現代では「つまらないものを贈るのか」と文字通りに受け取られ、相手を不快にさせてしまう可能性があります。特にビジネスシーンでは使わないのが賢明です。「心ばかり」や「ほんの気持ちですが」に言い換えましょう。
心得②:渡すタイミングを間違えない
お中元を贈る時期は地域によって異なります。相手が住む地域の慣習に合わせるのが最も丁寧です。時期を過ぎてしまった場合は、表書きを「暑中御見舞」や「残暑御見舞」に変えて贈りましょう。
地域 | お中元の時期(目安) | 時期を過ぎたら |
---|---|---|
東日本(関東など) | 7月初旬~7月15日 | 立秋(8月7日頃)まで → 暑中御見舞 それ以降 → 残暑御見舞 |
西日本(関西など) | 7月中旬~8月15日 |
心得③:品物への「ひと言」を添える
基本の言葉に加えて、品物に関する一言を添えると、思いやりがより一層伝わります。
- 相手の好物を贈る場合:「お好きだと伺いましたので、〇〇にしました」
- 生ものや冷たい品の場合:「冷たいものですので、どうぞお早めに冷蔵庫へお入れください」
- ご家族がいる場合:「皆様で召し上がっていただければと思いまして」
【状況別】お中元を渡す時の言葉 完全マニュアル
ここからは、具体的な状況に合わせて、会話の流れとそのまま使える言葉の例文をご紹介します。
ケース1:【手渡し】ビジネス(上司・取引先)の場合
最も丁寧さが求められる場面です。訪問前にアポイントを取るのが大前提。「夏のご挨拶に伺いたいのですが」と用件を伝えましょう。
百貨店員が教える!ビジネス手渡しの流れと会話例
まず紙袋から品物を取り出し、のしの正面が相手に向くように持ち替えてから、両手で差し出します。紙袋は畳んで持ち帰るのが正式なマナーです。
あなた:「〇〇様、いつも大変お世話になっております。」
あなた:「(品物を差し出しながら)心ばかりの品ですが、どうぞ皆様でお納めください。」
相手:「まあ、ご丁寧にありがとうございます。恐縮です。」
あなた:「日頃の感謝の気持ちでございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
ケース2:【手渡し】親族・目上の方の場合
丁寧さの中にも、温かみのある言葉選びを心がけましょう。親しき仲にも礼儀あり、です。
心が伝わる親族・目上の方への会話例
ビジネスシーン同様、品物を紙袋から出して渡します。「紙袋のまま失礼します」と断り、そのまま渡しても構いません。
あなた:「お父さん(お義父さん)、こんにちは。暑いですね。」
あなた:「(品物を差し出しながら)いつもお世話になっています。ほんの気持ちですが、皆さんで召し上がってください。」
相手:「あら、いつもありがとうね。そんなに気を遣わなくていいのに。」
あなた:「いえいえ、日頃の感謝です。暑い日が続きますので、どうぞご自愛くださいね。」
ケース3:【手渡し】親しい友人の場合
堅苦しい言葉は不要です。相手に気を遣わせない、気軽な表現がベストです。
気軽さが嬉しい友人への会話例
紙袋のままでも全く問題ありません。「これ、よかったら」と笑顔で渡しましょう。
あなた:「〇〇、こんにちは!ちょっとしたものだけど、よかったらみんなで食べて。」
相手:「え、いいの?ありがとう!嬉しい!」
あなた:「大した物じゃないから、気にしないでね。夏バテしないようにね!」
ケース4:【玄関先で】長居せずスマートに渡す場合
アポなしでの訪問や、相手が忙しそうな場合は、玄関先で手短に済ませるのが思いやりです。
玄関先でのスマートな会話例
「本日はお忙しいところ恐縮です。玄関先で失礼いたします」と最初に断りを入れましょう。
あなた:「ご多忙のところ申し訳ございません。夏のご挨拶にだけ伺いました。」
あなた:「玄関先で大変失礼いたします。心ばかりの品ですが、どうぞお納めください。」
相手:「ご丁寧にありがとうございます。どうぞお上がりください。」
あなた:「いえ、すぐ失礼いたしますので、どうぞお気遣いなく。では、これで失礼します。」
【郵送する場合】心が伝わる、ワンランク上のマナー
お中元を郵送する際に最も大切なのは、品物だけを送りつけるのではなく、事前に「送り状」を送るか、品物に「添え状」を同封することです。これが、手渡しできない分のお詫びと、日頃の感謝を伝える最高のマナーとなります。
「どんな文章を書けばいいの?」と悩まれる方も多いでしょう。ビジネス向け、親しい方向けなど、状況に応じた具体的な文例や、送り状と添え状の違いについては、以下の記事で専門的に詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
【完全ガイド】手紙・挨拶状の書き方はこちら
ビジネスで使える丁寧な文例から、親しい間柄で使えるカジュアルなメッセージまで、そのまま使えるテンプレートを多数ご用意しています。
まとめ:お中元の言葉は「相手を思う心」の表れ
お中元を渡す時の言葉や作法は、一見すると堅苦しく感じるかもしれません。しかし、その根底にあるのは、すべて「相手への感謝と、負担をかけまいとする思いやり」です。
なぜ事前にアポを取るのか?――相手の時間を奪わないため。 なぜ「心ばかり」と言うのか?――相手に返礼の気を遣わせないため。 なぜ紙袋を持ち帰るのか?――相手にゴミを処分する手間をかけさせないため。
この記事でご紹介したマナーは、そんな日本人が大切にしてきた「思いやりの心」の集大成です。百貨店のカウンターで見てきた、お客様の「喜んでくれるといいな」という温かい気持ち。その気持ちを正しく届けるために、このマニュアルが少しでもお役に立てれば、これほど嬉しいことはありません。