お中元に手紙を同封するマナー【百貨店員が解説】送り状・添え状の書き方と文例
心を込めて選んだ、お中元の品。美しい包装紙に包まれ、あとは贈るだけ。しかし、あなたの手を止める、一つの大きな問い。「手紙は…どうすればいいのだろう?」。一枚の紙の作法を間違うだけで、せっかくの贈り物が台無しになってしまうかもしれない——。その繊細な不安、よくわかります。
贈り物は「体」、
手紙は「魂」です。
百貨店で15年間、数え切れないほどのギフトに“魂”を吹き込むお手伝いをしてきた私が、あなたの真心を完璧な形で届けるための、全ての作法と技術をお伝えします。この記事を読めば、もう手紙で迷うことはありません。
【ルール編】まず知るべき、手紙同封の“絶対的な決まり事”
文章を考える前に、まず守らなければならないルールがあります。これを知らないと、せっかくの手紙が届けられない、という事態にもなりかねません。
最重要ルール:「信書」の法律。手紙は“封をしない”
宅配便(ヤマト運輸など)で、封をした手紙を送ることは法律(信書便法)で禁止されています。これは「信書」に該当するためです。お中元に手紙を同封する場合は、必ず「封をしない状態」で用意しましょう。封筒に入れる場合も、封入口を折るだけにしておきます。メッセージカードや一筆箋をそのまま入れるのが、最も確実でスマートです。
【百貨店ギフトカウンターの“鉄則”】
お客様が封をして持参されたお手紙を、泣く泣くお断りしなければならない。ギフトカウンターでは、そんな心苦しい場面が毎年必ずありました。お客様にはその場で封を開けていただくか、普通郵便で別送するようご案内していました。このルールだけは、絶対に覚えておいてください。
百貨店や配送業者は、手紙を同封してくれる?
はい、上記の「封をしていない」という条件を満たせば、ほとんどの百貨店やギフトショップで快く対応してくれます。注文時に「こちらのカードを同封してください」と手渡すだけでOKです。ただし、繁忙期や特殊な包装の場合は対応できないことも稀にあるため、心配な方は事前に電話で確認すると完璧です。
「送り状」と「添え状」、どちらが正解?
手紙には、品物より先に送る「送り状」と、品物に同封する「添え状」があります。どちらも丁寧な方法ですが、より格式が高く、相手への配慮が伝わるのは「送り状」です。品物が届くことを事前に知らせることで、相手が受け取りやすくなるからです。特に、目上の方やビジネスの相手には「送り状」を送るのが、最も丁寧な作法と言えるでしょう。
【技術編】相手の心に響く、手紙の書き方と文例
ルールがわかったら、次はいよいよあなたの想いを言葉にする技術です。贈る相手に合わせて、最適な「器」と「言葉」を選びましょう。
Step1:想いの“器”を選ぶ(便箋・一筆箋・カード)
- 封書(便箋):最も格式高い。目上の方、ビジネス、お悔やみのお礼状などに。
- 一筆箋:丁寧さと、ほどよい気軽さ。親戚や親しい上司、先生などに。
- メッセージカード:最もカジュアル。友人や同僚、家族に。
「手紙1枚だけ同封するのは失礼?」と心配される方がいますが、全く問題ありません。大切なのは枚数ではなく、内容と、選んだ紙の上質さです。
Step2:相手に合わせた“言葉”を紡ぐ(文例集)
対:ビジネスの上司・取引先
ポイント:格式を重んじ、時候の挨拶と日頃の感謝を丁寧に。
拝啓 盛夏の候、〇〇様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 つきましては、日頃の感謝のしるしまでに、心ばかりの品をお贈りいたしました。 皆様でご賞味いただければ幸いです。 時節柄、皆様の益々のご健勝を心よりお祈り申し上げます。 敬具
対:親戚・恩師
ポイント:丁寧さを保ちつつ、相手の健康を気遣う一文で温かみを。
猛暑が続いておりますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。 日頃より何かとお心遣いをいただき、心より感謝しております。 ささやかではございますが、お中元のしるしに涼菓をお贈りいたしました。 冷やしてお召し上がりください。 まだまだ暑い日が続きますので、どうぞご自愛ください。
対:親しい友人
ポイント:形式にこだわらず、素直な言葉で。相手との共通の話題に触れると◎。
〇〇ちゃん、元気?毎日暑いけど、夏バテしてないかな? 美味しいそうめんを見つけたので、お中元に贈ります。 食欲がない時でも、これならツルっといけるはず! また涼しくなったら、一緒にランチ行こうね。
【プロの一言】相手の心を動かす、魔法の一文
定型文だけでは、その他大勢の贈り物と差がつきません。最後に、相手の記憶に残るための「魔法の一文」を加えましょう。それは、「あなただから、これを選んだ」という、パーソナルな理由です。
【百貨店ギフトカウンターの“鉄則”】
あるお客様が、お酒好きな取引先へ高級なジュースを贈ろうとされていました。私は「なぜ、お酒ではなくジュースなのですか?」と伺いました。すると、「先方の奥様が、お酒を飲まれないと伺ったので…」と。その理由を「『奥様にも楽しんでいただければと思い、今年は皆様で召し上がれるジュースにいたしました』と一言添えられてはいかがですか?」とご提案したところ、後日、その取引先から「妻が大変喜んでいた。その心遣いが何より嬉しかった」と、これまで以上の感謝の連絡があったそうです。
この「あなただけの理由」こそが、贈り物の魂となるのです。
結論:手紙とは、あなたの“真心”そのものである
お中元は、日本の美しい文化です。そして、そこに添える手紙は、その文化の核心をなす、相手への思いやりそのものです。作法は、あなたのその温かい心を、誤解なく、最も美しい形で相手に届けるための知恵に他なりません。
この記事で得た知識と、あなた自身の真心。その二つが合わされば、あなたの贈り物は、間違いなく相手の心に深く、温かく届くことでしょう。
この記事を書いた人:fukushige(Premium Gift Compass 運営者)
高品質なギフトで、贈る喜びを。専門知識と実体験で、あなたのギフト選びを羅針盤のように導きます。百貨店での15年にわたるギフトカウンター勤務経験(特に高級ギフト全般)を活かし、読者の皆様に本当に役立つ情報をお届けしています。このサイトが、大切な方への最高の贈り物を見つける一助となれば幸いです。